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さくらのぶらじゃぁ初体験 43

管理

 だが、園美はその悔しさを藤隆にぶつける事はできなかった。
 着替えを終えたさくらが、階段を降りて来たからだ。
 急いだ様子の足音が、半ばで急に止まったのは、玄関を見て、その只ならぬ様子に気が付いたから。それはそうだろう。鬼かと見まごう形相で藤隆を睨みつける園美が纏っているオーラは、これだけの距離をして身体が強張る程に強いものだった。
 逆に言えば、それを真正面から受けて平気な藤隆や、園美の後ろで平然とさくらに手を振っている知世の方がどうかしている。
 立ち止まり、園美と藤隆を交互に見て、困惑しているさくら。もしかして、何か自分のために、揉め事になっているのではないかと気を揉んでいる。その事は園美にもすぐに判った。何しろさくらは、心のうちがすぐに表情や態度にでてしまうのだから。
 園美はすぐに表情筋を随意で緩め、さくらに優しい笑みを向ける。内心は怒りの炎で満たされていても、にこやかに笑わねばならない事は、大人の世界にはよくある事。まして大会社を率いる園美は、そうした経験が豊富だった。

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さくらのぶらじゃぁ初体験 42

管理

「何を買ったか、知りたいかしら?」
 藤隆に向けて言った一言。字面は質問だが、園美に訊く気はまったく無い。案の定、返事も待たず、懐の財布から一枚のレシートを取り出して、突きつけた。
 藤隆が眼鏡を指で押し上げ、小さなその文字を読んだ。
 3万円に近い合計金額が目に入る。この金額をさくらが出せるはずがない。それに園美の言葉からしても、お金を出したのが誰なのかはすぐに察しがついた。
「あ、ちょっと待っててください。今、財布を……」
「誰が、こんなはした金を、あなたに払ってくれなんて言ったの!?」
 柳眉を逆立てた園美が、声を荒げる。金銭感覚の違いとはいえ、この金額を「はした金」といい切るところが凄い。

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さくらのぶらじゃぁ初体験 41

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「あ、はい……とっても……気持ちいいです」
 同じカタチはしていても、履き慣れて自分の身体に馴染んだショーツとは微妙に違う感触。新鮮なその感覚を、さくらは気持ちいいと感じた。
「うんうん」
 満足そうな笑みを浮かべた園美は、さくらの両肩に手を移し、肩越しに顔を近づけた。
「うん、やっぱり良いわね。上下そろっていると」
 わざと耳元で言う。肩越しに前の姿見を見ているのは、さくらにも判る。下着姿を見られているのは恥ずかしいと思う一方、褒められると悪い気はしない。
「さて、それじゃぁ……」
 さくらの肩から手を離した園美が言った。振り返り、何だろう? とこちらを見ている二人に、
「次は、これいってみましょう」
 と、嬉しそうに左右の手にひとつづつ下げた、ブラとショーツがセットになったハンガーを見せる。

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さくらのぶらじゃぁ初体験 40

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「どお? 着けた感じは?」
 着け終わるのを待っていたように、園美が問いかけた。
「ええ、なかなか良いですわ」
 知世が答えると、園美は知世のお尻に手を伸ばし、左掌をぴったりと当てる。
「キツかったりする事は……ないようね」
 少し撫で回し、不自然に布地が張ったりしていないかを確かめる。触った感じ、木綿の布地はヒップを柔らかく包み込んでいて、これなら不快な事はないだろうと思えた。
 安心したように、にっこりと微笑んだ園美は、愛娘を見上げ、
「やっぱり、上と下が揃っているのって、可愛いわねぇ」
 と、うっとりとしたため息交じりに漏らす。
 その言葉に触発されたわけでもないだろうが、さくらは知世の胸と下腹を交互に見ていた。確かに言うとおり、ブラジャーとショーツが揃えられていると、統一感があって良い感じだ。鏡で自分にあててみた時より、実際に着ているのを見たほうが、その印象が強く感じられる。

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さくらのぶらじゃぁ初体験 39

管理

「これも……って?……」
 さくらは手に持ったハンガーに目を落とした。園美の言葉の意味を、頭の中で反芻する。あえてこれを渡し、試着しろと言って来た以上、他に考えようはないが、それでもさくらは助けを求めるような気持ちで、疑問の言葉を口にした。
「も……もしかして……その……ぱ……ぱんつも……試着ですか?」
 先ほどは、両手でハンガー部分を軽く摘むようにして、ただ自分の前に下げていただけだったのに、今は最後の砦として、左手で胸に、右手で下腹にと、しっかり押し付けている。
 そんな様子を見た園美は、ほんの数瞬の思考で、さくらをどう説得するかの答えを導き出した。
「ええ。そうだけど…………なにか、へん?」
 きょとんとした表情をわざと作り、答えた。すごく当たり前のことを敢えて問われて困惑しているという演技。そういう態度を取ることで、さくらに「これを断ったら、ヘンに思われるかも」と思わせる事だった。

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