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さくらのぶらじゃぁ初体験 43

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 だが、園美はその悔しさを藤隆にぶつける事はできなかった。
 着替えを終えたさくらが、階段を降りて来たからだ。
 急いだ様子の足音が、半ばで急に止まったのは、玄関を見て、その只ならぬ様子に気が付いたから。それはそうだろう。鬼かと見まごう形相で藤隆を睨みつける園美が纏っているオーラは、これだけの距離をして身体が強張る程に強いものだった。
 逆に言えば、それを真正面から受けて平気な藤隆や、園美の後ろで平然とさくらに手を振っている知世の方がどうかしている。
 立ち止まり、園美と藤隆を交互に見て、困惑しているさくら。もしかして、何か自分のために、揉め事になっているのではないかと気を揉んでいる。その事は園美にもすぐに判った。何しろさくらは、心のうちがすぐに表情や態度にでてしまうのだから。
 園美はすぐに表情筋を随意で緩め、さくらに優しい笑みを向ける。内心は怒りの炎で満たされていても、にこやかに笑わねばならない事は、大人の世界にはよくある事。まして大会社を率いる園美は、そうした経験が豊富だった。
 それでも、藤隆の事は腹に据えかねたのだろう。目前に居るのをわざと無視し、さくらにだけ顔を向け、軽く手などを振ると、
「それじゃ、さくらちゃん、今日は失礼するわね」
 と言って踵を返す。
「あ………あの………」
 思わず知らず、さくらは園美を呼び止めた。せっかく来たのだから、お茶くらいは──と、咄嗟に出てしまったのだが、そういえばクルマの中で、この後仕事があるとも言っていた事を思い出す。
 この後、どういえば上手く収まるかを考えて、頭の中がぐるぐるになってしまったさくらを、今度は作り笑いではない笑顔で見た園美は、
「また、遊びに来てね。楽しみにしてるから」
 そう言って、意味ありげなウィンクをさくらに送る。
 また───
 これの意味は、ふんわりなさくらにも判った。「また」胸のサイズを測られたり、「また」園美が選んだブラジャーを試着させられたり、「また」似合うものかどうかを見てもらったりする事に違いない。当然、「また」裸も見られてしまうのだろう。頭の中を回ったイメージに、さくらの頬が赤くなる。
 その可愛い表情に、園美は、さくらをこのまま抱えて連れ帰りたい衝動にかられたが、さすがにそれは犯罪なので、必死に我慢する。
 園美が玄関の外に出ると、知世がドアを両手で持って、ゆっくりと閉めた。
 閉じる間際、じっとさくらを見る。さくらも手を振ってそれに応えた。目と目で交わす会話。明後日の体育に着けていくブラジャーは、お揃いのものにしよう。そして、明日中にどれにするか選ぶ事を伝え合う。
 そっとドアが閉じられると、緊張が切れたのか、さくらが大きくため息をつく。
「何、買ってきたんだ?」
 ややぶっきらぼうな桃矢の声に、さくらは顔を上げた。
 もちろん、桃矢は園美の話を聞いていた。だから何を買ってきたは知っている。それでもあえて問うたのは、さくらが自分からは言い出せっこないのに、言えない事に罪悪感を持ち、悩む事を知っているからだ。
 さくらは、答えるかどうか、悩んだ。
 うそをついたり、誤魔化したりが性格的に苦手なさくらは、正直に「園美さんにブラジャー買ってもらった」と答えるという選択肢を、半分くらい真面目に検討していた。
 だが、それに父と兄がどう応えるかを考えると、この選択には問題がある。「どんなのか、見せてみろ」と言われるかも知れないからだ。
 良いタイミングというべきか、悪いタイミングというべきか、白のブラジャーが今、胸を包み込んでいる。慣れるため、試着したブラをそのまま着けて帰るよう園美に言われ、疑わずにそのとおりにしたからだ。渡されたのは白で、どういう理由だかよくわからないが、一番最初に試着したものだ。
 部屋着に選んだのは、ゆったりとしたからし色のスモックシャツ。ブラ以外の下着は着けていない。下にはキュロットを合わせている。このシャツの裾を両手の指で摘み、肩と水平になるくらい腕を引き上げて、捲り上げたらどうだろう?裾は鼻の下あたりまで来る。そうやって、二人に胸を晒し見せたら、どんな反応をするだろうか。
 たぶん、藤隆は「可愛いですね」とか「似合いますよ」と褒めてくれるだろう。そう考えると嬉しい。一方の桃矢は「いらねえだろ」「ぺったんこのクセに」と鼻で笑い、憎まれ口をきくかもしれない──
 そこまで想像ハッとなった。いったい何を考えているのだろう。肉親とはいえ、ふたりは男の人。その男の人に胸を見せるなんて、いくらなんでも恥ずかしすぎる。
 という事は、素直にブラジャーを買ってもらったと白状するのはダメだという事だ。
 なんとなく後ろめたいし、さらに追求される危惧もあるが、そうなると思いつく答えはひとつしかなかった。
「…………ないしょ……」
 呟くようにそう言って目をそらす。
 心の中で、「お願い、聞かないで」と繰り返す。でも、意地の悪い兄の事、内緒じゃダメだとしつこく聞いてくるかもしれない。それでもさくらは心の中で祈り続けた。
「………そうか……」
 桃矢の答えに、さくらは思わずはっとして顔を上げた。願ってもない回答だが、意外な気もする。
「……メシにするぞ」
 そうぶっきらぼうに言うと、ひとりすたすたと食卓の方に歩いていってしまった。
 さくらは、追求を免れたことに気付くまで数秒を要し、それから安堵のため息を大きくついた。
「今日はさくらさんの好きなハンバーグですよ」
 藤隆もそう言うと、まるで園美が来て一悶着あったことなどきれいさっぱり忘れたかのように爽やかな笑みを浮かべた。
 さくらもそれにつれられ、愛らしい笑みを返すと、藤隆に続いてキッチの方に脚を向けた。

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