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さくらのぶらじゃぁ初体験 42

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「何を買ったか、知りたいかしら?」
 藤隆に向けて言った一言。字面は質問だが、園美に訊く気はまったく無い。案の定、返事も待たず、懐の財布から一枚のレシートを取り出して、突きつけた。
 藤隆が眼鏡を指で押し上げ、小さなその文字を読んだ。
 3万円に近い合計金額が目に入る。この金額をさくらが出せるはずがない。それに園美の言葉からしても、お金を出したのが誰なのかはすぐに察しがついた。
「あ、ちょっと待っててください。今、財布を……」
「誰が、こんなはした金を、あなたに払ってくれなんて言ったの!?」
 柳眉を逆立てた園美が、声を荒げる。金銭感覚の違いとはいえ、この金額を「はした金」といい切るところが凄い。
「お店の名前を読めと言っているのよ!」
 苛立たし気に詰め寄る園美の言葉に、藤隆はレシートの上の方に視線を移した。そこにある「女性下着専門店」の文字を見つけ、ぎょっとして固まる。
 その反応に園美はわが意を得たりと、
「判ったようねぇ……そう。さくらちゃんに買ってあげたのは、ブラジャーよ。ブ・ラ・ジャ・ア」
 さくらのヒミツをいとも簡単にバラしてしまう園美。その口調が、表情が、態度が、この状況をどれほど楽しんでいるかが判る。
 藤隆と桃矢は顔を見合わせ、さらに呆然とその視線を二階に向けた。信じられないという表情から見ても、まださくらにブラジャーが必要だとは思っても見なかった事がありありと判る。
「気が付いてなかったのね? これだから男親ってダメなのよねぇ……いい事? さくらちゃんのおっぱいは、まだ目立たないけど、膨らみ始めてるのよ。ちゃぁんと成長に合わせたブラジャーを選んであげなくっちゃいけないわね」
 そこで園美は言葉を区切り、にぃっと唇を歪めた。藤隆を見る目に、あからさまに馬鹿にした光がある。
「ああ、でも、木之本先生には、全然、関係がありませんわねぇ」
 と、『全然』に思い切り力を込めて言った。
「あなたは男親ですもの。さくらちゃんだって、恥ずかしくて胸の事をあなたには聞きたくないでしょうし、第一、知識もないでしょう? まさに絵に描いたような、役立たず、ね」
 言葉を続けながら、やはり『役立たず』にも不自然な程、力を込める。何も言えない藤隆に、園美の連続口撃は留まるところを知らない。
「さくらちゃんは、これからだんだん女らしくなっていくのよ。私は、その一つ一つの場面で相談もしてもらえるし、成長も確かめられる。適切にアドバイスもしてあげられる。でも、あなたは一切、関われない。さくらちゃんは、あなたには秘密の事がどんどん増えていく。そして、そのうち、疎まれるようになる。例えば男のあなたに下着を触られたくないでしょうから、お洗濯は別々って事になったりね。そのうち口を利くのも嫌になるかもしれないわねぇ」
 思春期を迎えたさくらに、藤隆が嫌われる場面を脳裏に描き、それがよっぽどお気に召したのか、園美は興奮して、目がキラキラしている。
「どお? 悔しいでしょう? 認めたくないでしょう? でも現実なのよ。さくらちゃんの女のコとしての成長と、あなたは見る事も、触れる事も、知る事も出来ない。そして、さくらちゃんは、あなたに秘密を持ち、どんどん距離を置くようになる……寂しいわねぇ。悲しいわねぇ……でも安心して。さくらちゃんの面倒は、私がぜーんぶ見てあげるわ。男親のあなた出来ない事、何もかも、ぜーんぶ!」
 自分で言っていて、その状況に酔ったのだろう。言葉を切った園美は突然に笑い始めた。
「くっくっくっ……ははは………あははははは」
 転げんばかりに笑う園美は、気の弱い人間なら気が触れたと思うだろう。怖くなって逃げ出しているかもしれない。だが、園美の事をよく知る人は、彼女が見かけとは正反対に、とても子供っぽい一面を持っている事を知っている。もちろん、今も、自慢が出来る事が嬉しくて仕方が無いのだと、すぐに判った。
「そう……ですか……それでは、よろしくお願いします」
 ひとしきり、園美が笑うのを見守っていた藤隆が、深々と頭を下げて言った。
 ぴたりと、園美の笑いが止む。数瞬前まで狂ったように笑っていたのが信じられないくらい、険しい表情。そして、その顔で藤隆を睨みすえた。
「悔しく……ない……の?……」
「いやぁ、園美くんの言うとおり、僕はその点ではまったくの役立たずですから。もしさくらさんにブラジャーの事なんか聞かれたら、何も知らないですから、困ってしまいます」
 実に爽やかな笑顔で、頭を掻きながら藤隆は答えた。
「だから、正直に言うと、さくらさんの事で、相談出来る人が居てくれれば良いな、とは思っていたんですよ。さくらさんだって、父親の僕には相談できない事もあるでしょうからね。でも、園美くんなら安心だ。どうか、さくらさんの事、よろしくお願いします」
 そう言って、もう一度頭を下げた。
 園美は、両手の拳を握り締め、瘧のように身体を震わせている。
 怒っているのだ。藤隆の態度に。
 本来、怒る筋合いではない。藤隆は、園美の言い分を100パーセント認め、頭を下げて頼み込んでいる。全面降伏以外の何ものでもない。いわば、園美の完全勝利である。喜んでもいいはずだ。
 それでも、園美は藤隆の態度が気に入らない。
 もっと、なんと言うか、悔しがって見せて欲しい。自分が男で、娘の成長にタッチ出来ない事に地団太を踏む姿が見たい。どうしようない事実なのに、何とかしようとみっともなく足掻き、それでも叶わずに失意のどん底に落ち込む姿を哂ってやりたい。
 そう思っていたのに、藤隆がまったく悔しがらないのが園美には悔しかった。

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