さくらのぶらじゃぁ初体験 57
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「ほえぇぇ」
急に皆ながブラジャーをし出したのに驚いたのか、さくらがポカンと周囲を見ている。
「みなさん、昨日の発表を見ていてくださったんですね」
知世が言った。
昨日の発表──それは、大道寺グループが、少女向けの下着ブランドの立ち上げを宣言する内容だった。
知世が「一週間待って」と皆に伝えた期限をピタリと守り、園美とそのスタッフは、メーカーの製造部門や流通ルートを買収し、一週間で自社ブランドとして立ち上げてしまったのだ。
「ほえぇぇ」
急に皆ながブラジャーをし出したのに驚いたのか、さくらがポカンと周囲を見ている。
「みなさん、昨日の発表を見ていてくださったんですね」
知世が言った。
昨日の発表──それは、大道寺グループが、少女向けの下着ブランドの立ち上げを宣言する内容だった。
知世が「一週間待って」と皆に伝えた期限をピタリと守り、園美とそのスタッフは、メーカーの製造部門や流通ルートを買収し、一週間で自社ブランドとして立ち上げてしまったのだ。
ブラントの名前は「ペタル」。「花びら」を意味している。
新聞での扱いもごく小さなもので、TVでの中継があった訳でもないが、クラスメイトの親の会社という事もあってか、友枝小学校、さくらのクラスでは比較的早く伝わった。「でも買った時はドキドキだったよ。利佳ちゃんが買った時の、最初の値段聞いてたから。本当に発表どおりの値段なのか、ちょっと心配だったんだぁ」
奈緒子が言う。
実は、このブランドの最大の目玉がディスカウントだった。
千春や、奈緒子の着けているファーストタイプのブラでも、五百円玉でおつりが来る価格。必要とする年代の、お小遣いで買えるようにと、値段設定された結果だった。
それでいて材料の質はまったく落としていないか、むしろ向上させている。コスト管理を徹底し、使用するロゴを広告として使う交渉などにより、販売価格を極限まで抑え込んだのだ。
「でも、知世ちゃんの言うとおり、一週間待ってよかったわ」
千春も言った。
あの日、知世の言う事を無視して最初のブラを買っていたら、今、身に着けているものの数倍の値段を払う所だった。
「ありがとうございます」
知世がにっこりと笑って言った。母親の会社で作られた物が、こうして使われて、そして喜ばれているのを見るのは嬉しい事である。
「お礼を言うのはこっちだって。お小遣いで買えるし、それに取っても買いやすかったよ」
そういう声が上がった。
ペタル・シリーズを販売するにあたり、大道寺グループは、いわばブラジャーのソムリエのような店員を置くことを求めた。
花びらを模したマークの入った女性下着を売っているお店に行き、そこで花びらを模したバッチを胸に着けた女性店員に相談すれば、初めてのブラジャーもスムーズに買える。これがもうひとつのキャッチフレーズだ。
利佳を事情聴取して、何処で買ったら良いのか、誰に相談したらいいのかが判らないのが不安の元になっている事を知った、園美の発案である。
更衣室の中では、互いのブラを見せ合い、来月のお小遣いで買う物──いや、買ってないコの中には、今日にも買う物を相談しあったりしている声で喧しく、この間までとうって変わって、さくらや利佳のブラも、「憧れの的」から「ひとつの選択肢」という扱いに降格されてしまった。
現に、ハイネックを捲り上げ、今日はU型の純然たる白のファーストブラを披露しても、前回までと違い、ギャラリーが集まらない。
利佳がピンクの水玉模様のものを晒しても同じだった。
「でも……これでだいぶ気が楽ね。体操着でも、みんなに見られないし」
気分的にはかなり楽になったのか、利佳が言う。一方で、いきなり注目から外れてしまったのは、ちょっと寂しい気持ちもしていた。
けれど、じっくり他のコのブラを見れるのは、なかなか良いものだ。自分達がしていない、フリルのついたものを見たりすると、あれもいいなと、思って見つめてしまったりしながら、ゆっくりと体操着に袖を通し、同じく着替え終わった知世の手をとって、グラウンドへと出て行った。
新聞での扱いもごく小さなもので、TVでの中継があった訳でもないが、クラスメイトの親の会社という事もあってか、友枝小学校、さくらのクラスでは比較的早く伝わった。「でも買った時はドキドキだったよ。利佳ちゃんが買った時の、最初の値段聞いてたから。本当に発表どおりの値段なのか、ちょっと心配だったんだぁ」
奈緒子が言う。
実は、このブランドの最大の目玉がディスカウントだった。
千春や、奈緒子の着けているファーストタイプのブラでも、五百円玉でおつりが来る価格。必要とする年代の、お小遣いで買えるようにと、値段設定された結果だった。
それでいて材料の質はまったく落としていないか、むしろ向上させている。コスト管理を徹底し、使用するロゴを広告として使う交渉などにより、販売価格を極限まで抑え込んだのだ。
「でも、知世ちゃんの言うとおり、一週間待ってよかったわ」
千春も言った。
あの日、知世の言う事を無視して最初のブラを買っていたら、今、身に着けているものの数倍の値段を払う所だった。
「ありがとうございます」
知世がにっこりと笑って言った。母親の会社で作られた物が、こうして使われて、そして喜ばれているのを見るのは嬉しい事である。
「お礼を言うのはこっちだって。お小遣いで買えるし、それに取っても買いやすかったよ」
そういう声が上がった。
ペタル・シリーズを販売するにあたり、大道寺グループは、いわばブラジャーのソムリエのような店員を置くことを求めた。
花びらを模したマークの入った女性下着を売っているお店に行き、そこで花びらを模したバッチを胸に着けた女性店員に相談すれば、初めてのブラジャーもスムーズに買える。これがもうひとつのキャッチフレーズだ。
利佳を事情聴取して、何処で買ったら良いのか、誰に相談したらいいのかが判らないのが不安の元になっている事を知った、園美の発案である。
更衣室の中では、互いのブラを見せ合い、来月のお小遣いで買う物──いや、買ってないコの中には、今日にも買う物を相談しあったりしている声で喧しく、この間までとうって変わって、さくらや利佳のブラも、「憧れの的」から「ひとつの選択肢」という扱いに降格されてしまった。
現に、ハイネックを捲り上げ、今日はU型の純然たる白のファーストブラを披露しても、前回までと違い、ギャラリーが集まらない。
利佳がピンクの水玉模様のものを晒しても同じだった。
「でも……これでだいぶ気が楽ね。体操着でも、みんなに見られないし」
気分的にはかなり楽になったのか、利佳が言う。一方で、いきなり注目から外れてしまったのは、ちょっと寂しい気持ちもしていた。
けれど、じっくり他のコのブラを見れるのは、なかなか良いものだ。自分達がしていない、フリルのついたものを見たりすると、あれもいいなと、思って見つめてしまったりしながら、ゆっくりと体操着に袖を通し、同じく着替え終わった知世の手をとって、グラウンドへと出て行った。