【ブログ版】ゆんゆんが大好き

上記の広告は１ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

　しばらくの間、戸惑いが女子更衣室を満たす。顔を見合わせ、知世の言について、なにやら小声で話が買わされる。
　だが、ややあってひとつの結論が生まれた。
　知世の性格や日頃の言動からして、嘘をついたり、その言が裏切られるという事はあり得ない。それならば、言うとおり待ってみて損になる事はないだろう。そういう結論がまとまった。
「判ったわ。それじゃ、あたし、買うの一週間待ってみる」
　千春がそう言うと、知世はなんとも言えない、優しい笑みを浮かべた。
「母にも、クラスで欲しいコがいたと、伝えておきますね？」
　そう請け負った。
「ねぇ、もう着てもいい？」
　別方向で話が盛り上げっているのを見て取ったさくらが、そう声をかけた。
　さくらと知世、そして利佳は、上半身は殆ど裸。いつまでも、こんな恥ずかしい格好をしていたくない。
「えー？　もう少し見てたいなぁ」
　奈緒子が冗談めかして言うと、
「ほえぇぇ！」
　さくらが口癖になっている、困った時や驚いた時の声をあげて胸を手で隠すような仕草をした。
　それが妙に可笑しくて、更衣室の中に笑いが漏れる。一人、また一人と笑いは伝染していき、いつの間にか、見られている側のはずの知世も、利佳も、そしてさくら自身も、笑う側に加わっていった。

---

　──それから、一週間と一日。
　体育の授業の着替えのため、再びクラスの女子が更衣室に集まっていた。
　この一週間で２回、体育の授業があり、そのたび、さくらと知世、利佳の三人はブラジャーを披露させられている。
　今日もまた、そうなるような気がして、さくらはちょっとため息をつき、ハイネックの裾に手をかけた。
「ねぇねぇ、知世ちゃん」
　上着を脱ぎ、ハイネック姿になった千春が、何かを含んだ笑みを浮かべ、知世のそばに近づいて来る。さくらも、利佳も、交差したままの手を止め、そんな千春を「どうしたんだろう？」という表情で見つめた。
「ジャーン！」
　そう、ファンファーレのような声をあげた千春は、それとともに、掴んでいた中着の裾を一息に上へ捲り上げた。
「！」
　さくらも、利佳も息を呑む。そこには、肩紐が細めの白いファースト型で、下に星のマークと共にロゴのプリントされた、可愛らしいブラジャーが着けられていた。
「あら？　可愛いですわね」
　知世はにこやかに笑って、それを褒めた。
「えへへぇ……昨日の見て、買っちゃったんだ」
　捲り上げたハイネックを頭から抜いた千春が、嬉しそうにブラジャーを見せびらかす。
「あ、千春ちゃんも買ったんだぁ」
　ちょっと高いその声は、奈緒子のもの。
「あたしも買ったんだよぉ」
　言いながら、奈緒子もハイネックを捲り上げる。そこにはピンクのストライプ模様のブラジャーがあった。
　千春や、奈緒子ばかりではない。
「あたしも」
「私も買ったのよ」
　みんな言いながら、ハイネックを捲り上げると、そこには色や形が様々なファーストブラが花畑のように次々と咲き綻んだ。
「あーん、わたし昨日、お稽古で買えなかったぁ！」
「あたしも」
　半数くらい、都合がつかずに買えなかったのか、まだ着けていないコも居るが、昨日まで三人だけだった着用率が、一気に半数を超える数に急増していた。