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さくらのぶらじゃぁ初体験 58

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エピローグ


 その後、さくらのクラスでは体育の時間の度に着用率が上がり、数回もすると全員がブラジャーをするようになっていった。
 一月が経った今では、他のクラスの女子にも波及し始めている。
 そんなある日の、園美は会議に出ていた。
「報告を」
 豪奢な革張りの椅子に腰を下ろし、短く言った。
「デパートやショップからの扱いの申し込みは順調に増えています」
 専任の担当者の報告に満足そうに頷いた。
「品質の方は維持できている?」
「生産する工場を3つ、新たに確保しました。現存のうち、一つの工場については品質基準を割りそうですので、警告してあります」
「安価といっても、質を落としたら意味なしよ。クリアできないなら、処分なさい」
 園美は、眉一つ動かさず、冷徹に言った。
「広告の効果はどう?」
「土曜や日曜のアニメ番組、子供向け漫画雑誌に広告を打ってあります。また、製作会社を通じて、脚本にも挿入させました。影響か、視聴率やコミックス関係の売り上げに向上が見られ、使用ロゴの広告料の価値が上がりつつあります」
「それはいい事だけど、目的外の『成人した男性』が数字だけ押し上げているという事は無いでしょうね?」
 園美は渋い顔で報告者を見た。
 女のコ向けアニメには、当然だが女のコが多く出る。学園ものなら尚更だ。
 少女キャラクターが多く出れば、胸が膨らみだした事で悩むというストーリーを作るのは容易い。製作会社に、そうした場面を入れるように依頼をだすのは簡単な事だった。
 ノリ気な製作会社に対し、放送局が難色を示す事もあったが、それも大スポンサーの大道寺グループには逆らえるはずがない。
 結局、少女キャラクター達が、膨らみはじめた胸やブラジャーの事で悩み、「ペタル」のマークの着いたお店に行って店員さんに相談するという場面が放送電波に乗る事になり、ペタル・ブランドのCMも含めて、そうした「画面の中の女のコ」を好む一部の成人男性は、狂喜乱舞して喜んだようだ。
「可能な限り、データはクリーニングしてあります。が、その可能性は否定できません。ただ、視聴率等、各数値の押し上げについては、好材料ではありますが、否定的な材料にはならないため、放置してもよいのではないかと………」
 伺うように言う部下を、園美は細めた目で睨み、
「数字は良くても、気に入らないのよ」
 その低く迫力のある声音は、部下たじろがせずにはおかない。
 社長は、ペタルシリーズが男性の、特に性的好奇の目に晒されるのを極端に嫌がる。忘れていた訳ではないが、迂闊なことを言ったと泡を食った。
 暫く、会議室を重い空気が満たす。それを打ち破るように園美が、
「いいデザイナーは見つかった?」
 何処を見るでもなく、ポツリと言った。
「あ、はい。ご指示どおり、出来るだけ可愛らしいデザインのものを作るよう指示しまして……」
「試作品は?」
 部下の説明を遮って訊く。
「……出来ています。前回と同じ、社長のご指定のサイズで……」
「そう……」
 園美はそれに満足そうな笑みを浮かべた。
「判ったわ。この件はこれまでどおりに進行させるように」
「あ……あの……利益率が……さらに低下しまして……赤字ではありませんが……」
 恐縮して言う。企業人としては、利益は最優先課題だ。殆ど採算ギリギリというのは、かなりまずい事態である。例えそれが社長の指示を守った結果であっても、だ。
「その件は、前も言ったとおりよ。ペタルはいわば宣伝。購入層が若干拡大できて、多少名前が売れればそれでいい。出来れば、布製玩具の製造技術に何か加えられるものがあれば、言う事なしよ」
 園美は手を組み、可能な限り穏やかに言った。普通なら、一度だした指示を繰り返させるな、と言いたい所だが、利益が出なくても良いという指示は、普通の行動様式と逆なので、どうしても繰り返さざるを得ない。
「判りました……」
 安心した表情を浮かべた担当は、ホッと息を吐いて椅子に座る。
「じゃ、次の報告を」
 園美は別の担当者に報告を求めた。



 会議を終えた園美は、担当者に試作品を社長室に持ってこさせ、中を確認した。
 自分の目で見ても、なかなかに可愛らしい出来だ。担当は良いデザイナーを見つけてきたようである。
 満足した園美は、時計を見た。この時間なら多分大丈夫だろう。
 受話器を取り、外線ボタンを押すと、愛娘の携帯電話の番号を押す。
「あ、知世? 今、電話大丈夫? 帰り道?」
 一応、何処にいて、話しても大丈夫かどうかを訊く。
「うん……そう……それでね、明日、さくらちゃん呼べる? 試作品ができたの。だから、試着してもらいたいのよ……え? 隣にいるの?」
 勢い込んで訊いた。出来たら代わってもらい、この件を直接伝えたいと思った。
 だが、知世はそれをやんわりと制した。さくらになにかをお願いするのなら、園美のように勢いで押すのは、あまり良くないのが判っている知世は、自分が頼んでみると言って、保留にしてしまった。
 園美は、人差し指でマホガニーの机を叩き、単調な保留音を訊いた。
 1秒が1時間にも感じる、長い時間だった。
「もしもし……そう!? ありがとう!! じゃ、明日、必ずさくらちゃんを連れてきてね。お願いよ」
 直接、会話が出来ないのは残念だが、そこは何とか耐える。
 電話を置いた園美は、試作品の箱の中身をもう一度確かめ、うっとりと微笑んだ。
 明日は、これをつけたさくらを見ることが出来ると思うと、天にも昇る気持ちがする。
 そもそもペタルシリーズをはじめたのも、これが愉しみだから、というのが本当の理由だ。半ば私的流用に近いかもしれないが、自分の趣味を満足させ、少女達に夢を与え、ついでに会社にも多少はプラスになっているのだから、文句を言われる筋合いはない。
「これからも、楽しみにしててね。さくらちゃん」
 園美は、ひとりごちながら、箱を閉じた。
 さくらの、「ブラジャー初体験」は、まだまだ続きそうである。

Fin

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Secret

読みました

読ませていただきました。最後の終わり方は見事だと思ったのですが,冗長です。もし私ならこう書きます。

.......

その後、さくらのクラスでは体育の時間の度に着用率が上がり、
 §
§以下略
§
「デパートやショップからの扱いの申し込みは順調に増えています」
 園美は専任の担当者の報告に満足そうに頷いた。
「これからも、楽しみにしててね。さくらちゃん」

要するに

要するに【続きを読む】というところの続きを読まなくても立派に完結していると思います。

まぁ,下着メーカーなんて,大同小異なのかもしれませんね。

にゃはは

> 最後の終わり方は見事だと思ったのですが,冗長です。

 う(^^;
 微に入り細に入り 書いてしまうのはボクの特徴だったりします。そこをうまく削るのがプロなんでしょうねぇ

 実は、58で書きたかったのが、
「数字は良くても、気に入らないのよ」
 の部分だったりするので(^^;

 園美さんは、ああいう性格の人だから、萌えアニメに夢中になってる「大きな男性のお友達」とかは、嫌がるんだろうなぁという部分を出したかったので、こういう表現になりました(にゃはは)

 まぁ、あとはせっかく、利佳ちゃんに羞恥プレイな質問をしたので、それを活かしたところが欲しかったかなぁと。

 なんにしても、1本仕上げられて、ボクとしてはちょっと満足しています。
 読んでいただき、ありがとうございました。

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