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さくらのぶらじゃぁ 初体験 3

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「あ………あの……そのぉ……」
 知世が困ったように視線を逸らしたのが、さくらには確信になった。
「なにか困った事があったら、お話して! わたし、何でも力になるから!」
 さくらはさらに膝を詰め、知世の手を取ると真剣に言う。
 一瞬、びっくりした様にさくらの顔を見つめた知世は、次に伏し目がちにさくらの胸元を見た。
「ほえ?」
 それに誘われるように自分の胸元を見るさくら。友枝小学校指定の制服は、紺のセーラーにも、白地の襟やタイにも何か付いていたり、汚れている様子はない。
「……い、いえ……違うんです……その……」
 珍しく慌てた様子を見せた知世は、なんと言い繕うべきか考えた。
 だが、しばらく悩んでは見たものの、うまく誤魔化す言葉を思いつかない。それに、さくらに嘘をつくことの罪悪感もある。ややあって、一つ小さなため息をつくと、観念した様子で切り出した。
「聞いて……いただけますか?……」
 知世の言葉に、うんうんと力いっぱい頷きながら、さくらは手を握り締める。知世の力になってあげられる事が嬉しかった。さくらには、知世を助けてあげたという記憶や自覚が、あまりないためだ。むしろ、特別な時の衣服など、一方的にいろいろとお世話になっているという感覚を強くもっていて、これはお返しをするまたとないチャンスのように感じていた。
 知世はゆっくりと立ち上がると、部屋の隅に行き、紙袋を一つ手にして戻ってきた。
 袋はピンク地に白い水玉をちりばめた可愛らしいデザインで、赤いラメの入ったハート型のシールが口を止めている。
 プレゼント用と言ってもおかしくないこの袋は、まだ開封されていないことが判った。
 さくらの前に紙袋を置くと、知世は再びクッションに腰を落ち着ける。伏し目がちな視線で、その袋を見ていた。
「なぁに?……これ?……」
 さくらの恐る恐るの問いに、知世は答えない。ただ、表情を見たさくらは、この袋の中身について、知世が困っていることは理解できた。
「……誰かに……プレゼント?」
 一瞬、頭を過ぎった質問を口にする。誰か好きな人にあげようと、買ってきたか、手作りしたものの、渡すに渡せず困っている── この時期の恋する少女には、一番ありがちな展開だ。
 だが、知世はふるふると首を横に振る。それに、学校で知世が見ていたのは、みんな女のコだ。
 さくらは紙袋を手に取る。軽い。だが空ではなく、中に何か入っているのは間違いない。中身はなんだろうか?
「……なか、なにが入ってるの?」
「……どうぞ……開けてみてください……」
 さくらの問いに、知世はそう答えた。
 開けていいとは言われたものの、さくらは暫し逡巡した。だが、結局は好奇心には勝てない。折りたたまれた袋の口を止めているシールのところに人差し指を差し入れ、袋が傷つかないよう、そっと剥がしにかかる。
 やや時間がかかったものの、何とかキズを残さずにシールを剥がしたさくらは、宝物を扱うように、そっと紙袋の折りたたみを拡げた。
 袋の口から手を差し入れると、手に触れたのは布地の感触。
 それをそっと掴み、引き出す。出てきたものを見て、さくらは目を丸くした。
 清潔そうな純白のそれは、見慣れたカタチをしている。いや、似ているが少し違う。ノースリーブのシャツを上だけ切ったような形状。それは──
「こ!……こ……こ……これって……もしかして!?……」
 手の中のそれと、恥ずかしそうに俯く知世を、何度も何度も、かわるがわる見たさくらは、唾をひとつ飲み込んで、気持ちを落ち着け、ふたりの他には誰もいないのに、内緒話をするような、囁きに近い小声で、
「ぶ……ブラジャー?………」
 さくらの問いに、俯いた知世の頬が羞恥の色に染まった。
「ど、ど、どうしたの? これ?」
「……母が、買ってくれたんです……この間、一緒に入浴したときに、もう必要だから、と……」
「えぇ?……と、知世ちゃん、園美さんと一緒にお風呂入ってるの?」
 さくらは、さらに驚いた様子で問い返した。
 無理もないが、幼い頃に母を亡くしたさくらは、家族の中で唯一の女性。父親の藤隆や、兄の桃矢と一緒にお風呂に入っていたのは、確か二年生の時までだ。だから、家族と一緒にお風呂という感覚が驚きに直結してしまう。
 一方、柔らかな笑みを浮かべた知世は、
「母は、ご存知のとおり、忙しい方ですから、なかなか私と触れ合える時間がありません。ですから時間の取れるときは、できるだけスキンシップをするように、心がけているんです……」
 浮かべた笑みといい、物言いといい、どちらが母親なのか、判らない台詞だ。
 知世の言葉に、さくらは、我が子の背を流す、裸の園美を頭に浮かべた。
 実物を見たことはないが、服の上からでもかなり綺麗な肢体であることは想像に難くない。
 あんな綺麗な人と一緒にお風呂なんて……いいなぁ……
 母親に甘えるという叶わない想いもあって、さくらにはそのビジュアルはなんともうらやましい。
「一昨日の、日曜のことなんですが……」
 さくらの「はにゃ~ん」な表情から、内心を察した知世は、さくらの想いに応えるべく、そのときの様子を話はじめた。

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