さくらのぶらじゃぁ 初体験 2
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どうしたんだろう?知世ちゃん……
見れば、知世は隣に並んだクラスメイトをちら、ちらと見ている。
「次、瀬川、大道寺」
寺田の笛が鳴り、隣が駆け出したのに気づいて、慌てて知世も走り出した。
運動神経は、さくらには遥かに及ばぬ知世だったが、踏み切りは上手くいき、どうにか上を飛び越えることに成功。着地は若干よろけたが、合格と言ってよいフォームだった。
ホッっとため息をつき、ゆっくりと踵を返した知世は、並んだ列の後ろへと歩を進める。
まだ順番に並んでいる千春や奈緒子。そして、先に飛んで列の後ろにいる利佳──。次々とクラスメイトの女子を見ては、何かを探している様子だ。
どうしたんだろう?知世ちゃん……
見れば、知世は隣に並んだクラスメイトをちら、ちらと見ている。
「次、瀬川、大道寺」
寺田の笛が鳴り、隣が駆け出したのに気づいて、慌てて知世も走り出した。
運動神経は、さくらには遥かに及ばぬ知世だったが、踏み切りは上手くいき、どうにか上を飛び越えることに成功。着地は若干よろけたが、合格と言ってよいフォームだった。
ホッっとため息をつき、ゆっくりと踵を返した知世は、並んだ列の後ろへと歩を進める。
まだ順番に並んでいる千春や奈緒子。そして、先に飛んで列の後ろにいる利佳──。次々とクラスメイトの女子を見ては、何かを探している様子だ。
その視線が、さくらとぶつかった。普段と逆に、自分を見つめているさくらに気がついて、知世は、一瞬、驚いた様な顔を見せ、慌てていつもの慈母のような笑みを作る。だが、視線が一度下に流れ、再び顔に戻ったのを、さくらは見逃さなかった。それに、笑顔が何処となくぎこちない。
そのまま列の後ろへ進む知世を、さくらは首を巡らして追いかける。さくらから外れた視線が、別の女子へ移り、さらに別のコへと移っていく。
なにか………あったのかな?………
さくらは、後ろを振り返ったまま、そんなことを思った。そう思い始めると、今も列の後ろで視線を彷徨わせている知世の様子全てが、何かに困っているように見えてくる。
だが、もし本当に困ったことがあるなら、いつかの「シールド」のカードの時の様に、さくらに相談してくるのではないだろうか?とも思う。
「よーし、全員、もう一度!」
寺田が言って、ホイッスルを吹く。
苗字が「か」行のさくらの順番は、前から2番目。すぐに順番がやって来る。
何か困ってないか、お話聞いてあげよう。
そう決心したさくらは、ホイッスルに合わせて助走をはじめ、一気に踏み切りを決めていた。
耳に優しい磁器の音がする。
知世が、優雅ともいえる挙措で目の前に置いたティーカップ。それは、庶民のさくらにですら、香りで良い物だという事が判る紅茶だった。
「ありがとう」
受け取ったさくらは、とびっきりの笑顔を知世に向ける。
知世は、ティーポットを脇に置くと、クッションに腰を落ち着けた。
「それで………お話というのは?………」
膝の上に手を置き、伏し目がちにさくらを見る。
体育が終わった後、更衣室での着替えをしながら、さくらは知世に話しかけた。
『今日、お家におじゃましてもいい……かな? お話したいことがあるの……』
頭の中で、今日は家の予定が何もないことを確かめたさくらは、そう切り出した。
さくらの訪問なら、何時いかなる時でも大歓迎の知世だが、さくらの方から来訪を申し出ることは滅多にない。その事に一瞬、面食らったものの、それが嬉しい事だと気が付いてすぐに快諾。放課後、自宅の車を電話で呼び、さくらを案内してきたという訳だ。
「うん……」
言ったさくらは、カップを脇に置くと、両手を前について体重を支え、座っている膝をずいっと知世の方に進めて間を詰める。気圧されたように、少しだけ顔を引いた知世を真剣な瞳で真正面から見つめ、ナイショ話の様に小さな声で話しかけた。
「なにか……困ったこと、ない?」
「…………」
絶句する知世の額に汗が浮いた。
当人には悪いが、さくらの頭には「鋭い」とか「切れる」という形容詞をつけることは、間違ってもできない。いつも「ふんわり」としていて、何でも素直に信じてしまうタイプ。誰かがウソをついているとか、騙そうとしているとか、その行動には裏があるなどという想像が頭の中からすっぽりと抜け落ちている感じだ。
それだけに、まさか隠している事を見抜かれるなどとは、知世は夢にも思わなかった。
そのまま列の後ろへ進む知世を、さくらは首を巡らして追いかける。さくらから外れた視線が、別の女子へ移り、さらに別のコへと移っていく。
なにか………あったのかな?………
さくらは、後ろを振り返ったまま、そんなことを思った。そう思い始めると、今も列の後ろで視線を彷徨わせている知世の様子全てが、何かに困っているように見えてくる。
だが、もし本当に困ったことがあるなら、いつかの「シールド」のカードの時の様に、さくらに相談してくるのではないだろうか?とも思う。
「よーし、全員、もう一度!」
寺田が言って、ホイッスルを吹く。
苗字が「か」行のさくらの順番は、前から2番目。すぐに順番がやって来る。
何か困ってないか、お話聞いてあげよう。
そう決心したさくらは、ホイッスルに合わせて助走をはじめ、一気に踏み切りを決めていた。
耳に優しい磁器の音がする。
知世が、優雅ともいえる挙措で目の前に置いたティーカップ。それは、庶民のさくらにですら、香りで良い物だという事が判る紅茶だった。
「ありがとう」
受け取ったさくらは、とびっきりの笑顔を知世に向ける。
知世は、ティーポットを脇に置くと、クッションに腰を落ち着けた。
「それで………お話というのは?………」
膝の上に手を置き、伏し目がちにさくらを見る。
体育が終わった後、更衣室での着替えをしながら、さくらは知世に話しかけた。
『今日、お家におじゃましてもいい……かな? お話したいことがあるの……』
頭の中で、今日は家の予定が何もないことを確かめたさくらは、そう切り出した。
さくらの訪問なら、何時いかなる時でも大歓迎の知世だが、さくらの方から来訪を申し出ることは滅多にない。その事に一瞬、面食らったものの、それが嬉しい事だと気が付いてすぐに快諾。放課後、自宅の車を電話で呼び、さくらを案内してきたという訳だ。
「うん……」
言ったさくらは、カップを脇に置くと、両手を前について体重を支え、座っている膝をずいっと知世の方に進めて間を詰める。気圧されたように、少しだけ顔を引いた知世を真剣な瞳で真正面から見つめ、ナイショ話の様に小さな声で話しかけた。
「なにか……困ったこと、ない?」
「…………」
絶句する知世の額に汗が浮いた。
当人には悪いが、さくらの頭には「鋭い」とか「切れる」という形容詞をつけることは、間違ってもできない。いつも「ふんわり」としていて、何でも素直に信じてしまうタイプ。誰かがウソをついているとか、騙そうとしているとか、その行動には裏があるなどという想像が頭の中からすっぽりと抜け落ちている感じだ。
それだけに、まさか隠している事を見抜かれるなどとは、知世は夢にも思わなかった。