今日はいちゃいちゃの日なの 15
「どう……して?……」
返ってくる答えは判っていたが、フェイトはあえて聞いてみた。
「『美人は三日見ると飽きる』……って言うでしょ?……」
なのはは優しい笑みを浮かべて言った。
三日どころか、もう10年もこうして関係を維持しているのに、この例えも無いものだと思うが、いつもなのははこの答えを返してくる。
フェイトは、熱のあるような潤んだ瞳で、しばらく黙ってなのはを見上げていた。
それが、図らずもなのはに続きを促す事になった。
返ってくる答えは判っていたが、フェイトはあえて聞いてみた。
「『美人は三日見ると飽きる』……って言うでしょ?……」
なのはは優しい笑みを浮かべて言った。
三日どころか、もう10年もこうして関係を維持しているのに、この例えも無いものだと思うが、いつもなのははこの答えを返してくる。
フェイトは、熱のあるような潤んだ瞳で、しばらく黙ってなのはを見上げていた。
それが、図らずもなのはに続きを促す事になった。
「私は、フェイトちゃんが好き………でも……どんなに好きでも、フェイトちゃんだけ見て、他に何にも見ないで……何もしないで……ずっとイチャイチャや……えっちばかりしてたら……きっと私はダメ人間になっちゃうんじゃないかって……それで、フェイトちゃんにも飽きちゃうんじゃないかなって……そう思うと、怖いんだ……」
ゆっくりと語りながら、なのははフェイトの身体を撫でたり、金色の髪を掌ですくって、サラサラと流したりと、ずっと悪戯を続けていた。
フェイトを少しでも感じていたいという想いなのかもしれない。
「……そんな事には絶対なりたくないから……だから、フェイトちゃんとこういう事するのは、時々がいい……仕事もいっぱいして、他の人の事も見て、お付き合いして……それで、フェイトちゃんを好きって気持ちを溜めて、溜めて……時々、思いっきりするの。こんな風にスルのは、とっても特別な日で、絶対に当たり前の事にならないように……そしたら、フェイトちゃんとこうしてスルのが、とっても幸せに思えるでしょう?……」
話した内容も、一文一句とまではいかないが、何度か聞いたものと同じだった。フェイトが自分の夢想を一蹴されたのに、全然悲しくなかったのは、これが理由。
性分だから仕方ないとはいえ、この考えすぎる性格は、はじめて出会い、戦ったときから変わらないような気がする。
思えば二人とも、愛をタダで貰った経験があまりに少なかった。なのはは家族の中で、自分が常に浮いているという感覚を持っていたし、フェイトにいたっては愛された記憶は全て作り物。だからこそ、愛を得られる事を「当たり前」と思う事ができず、常にそれを得る努力をし、得られたものを手放したくないと、いろいろ考えてしまうのだろう。
なのはと二人きりで過ごせる世界を夢想していたフェイトにしても、長期に渡って離れ離れになる事を宿命付けられた執務官を辞めようとしないのは、夢想は夢想として、実はなのはの答えと同じ事を思っているのかもしれない。
「……今日は……幸せ?……」
「うん……」
なのはが、問いに笑って答えてくれるのが嬉しい。
フェイトはもう一度腕を伸ばし、なのはと口付け、身体を撫でてもらい、自分も掌の届くところを撫で摩った。
ただ、ゆっくりと流れている時間──
白かった室内の色が、ゆっくりとオレンジ色に染まっていく。西の窓から入る夕焼けが部屋の趣を変えていた。
やがて、黄昏を迎える今日という日。
まさしく、その語源となったように、こうして抱き合っている人の顔すら判らなくなってくる。
なのはが左手の先に小さな魔法画面を開く。コントロールパネルだ。灯りをつける操作をすると、間を置かず室内が明るくなる。
同時に、窓ガラスに混入されている魔法物質が発動。光を「通過」ではなく、「反射」に変更する。室内は光が外へ漏れないので灯りの効率はあがるし、外から見えてしまう心配もいらない。見た目はやや暗い青みがかった光る板。もちろん、反射率を調整すれば、鏡のような完全反射にする事もできるが、部屋のほぼ一面を鏡にする用事は今のところ、ない。
「さて……じゃぁ支度しようか?……」
ゆっくりとなのはが言った。
もちろん、これが夕飯の支度だと判らないフェイトではない。素早くなのはの膝の間から身体を起こした。
遅れて身を起こしたなのはに手を貸すと、ゆっくりと台所に向かう。
夕飯のメニューはカレーとなった。今日の場合、どうしても簡単にできる事が優先事項になってしまうが、それはやむを得ないだろう。
先に台所に入ったなのはが、ごく自然にエプロンを手に取る。なんとなく、なのはの裸エプロンが見られるのが、フェイトには嬉しかった。
今日一日、ずっとみていた一糸も纏わぬ裸より、身体の一部を隠したこの姿の方がえっちに見えるのはなぜだろう。
ゆっくりと語りながら、なのははフェイトの身体を撫でたり、金色の髪を掌ですくって、サラサラと流したりと、ずっと悪戯を続けていた。
フェイトを少しでも感じていたいという想いなのかもしれない。
「……そんな事には絶対なりたくないから……だから、フェイトちゃんとこういう事するのは、時々がいい……仕事もいっぱいして、他の人の事も見て、お付き合いして……それで、フェイトちゃんを好きって気持ちを溜めて、溜めて……時々、思いっきりするの。こんな風にスルのは、とっても特別な日で、絶対に当たり前の事にならないように……そしたら、フェイトちゃんとこうしてスルのが、とっても幸せに思えるでしょう?……」
話した内容も、一文一句とまではいかないが、何度か聞いたものと同じだった。フェイトが自分の夢想を一蹴されたのに、全然悲しくなかったのは、これが理由。
性分だから仕方ないとはいえ、この考えすぎる性格は、はじめて出会い、戦ったときから変わらないような気がする。
思えば二人とも、愛をタダで貰った経験があまりに少なかった。なのはは家族の中で、自分が常に浮いているという感覚を持っていたし、フェイトにいたっては愛された記憶は全て作り物。だからこそ、愛を得られる事を「当たり前」と思う事ができず、常にそれを得る努力をし、得られたものを手放したくないと、いろいろ考えてしまうのだろう。
なのはと二人きりで過ごせる世界を夢想していたフェイトにしても、長期に渡って離れ離れになる事を宿命付けられた執務官を辞めようとしないのは、夢想は夢想として、実はなのはの答えと同じ事を思っているのかもしれない。
「……今日は……幸せ?……」
「うん……」
なのはが、問いに笑って答えてくれるのが嬉しい。
フェイトはもう一度腕を伸ばし、なのはと口付け、身体を撫でてもらい、自分も掌の届くところを撫で摩った。
ただ、ゆっくりと流れている時間──
白かった室内の色が、ゆっくりとオレンジ色に染まっていく。西の窓から入る夕焼けが部屋の趣を変えていた。
やがて、黄昏を迎える今日という日。
まさしく、その語源となったように、こうして抱き合っている人の顔すら判らなくなってくる。
なのはが左手の先に小さな魔法画面を開く。コントロールパネルだ。灯りをつける操作をすると、間を置かず室内が明るくなる。
同時に、窓ガラスに混入されている魔法物質が発動。光を「通過」ではなく、「反射」に変更する。室内は光が外へ漏れないので灯りの効率はあがるし、外から見えてしまう心配もいらない。見た目はやや暗い青みがかった光る板。もちろん、反射率を調整すれば、鏡のような完全反射にする事もできるが、部屋のほぼ一面を鏡にする用事は今のところ、ない。
「さて……じゃぁ支度しようか?……」
ゆっくりとなのはが言った。
もちろん、これが夕飯の支度だと判らないフェイトではない。素早くなのはの膝の間から身体を起こした。
遅れて身を起こしたなのはに手を貸すと、ゆっくりと台所に向かう。
夕飯のメニューはカレーとなった。今日の場合、どうしても簡単にできる事が優先事項になってしまうが、それはやむを得ないだろう。
先に台所に入ったなのはが、ごく自然にエプロンを手に取る。なんとなく、なのはの裸エプロンが見られるのが、フェイトには嬉しかった。
今日一日、ずっとみていた一糸も纏わぬ裸より、身体の一部を隠したこの姿の方がえっちに見えるのはなぜだろう。