彼女とえっちができた理由 1
雑破業先生の、「彼女が髪を切った理由」の18禁2次小説です。
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「よし!おしまいっと」
あたしは言って、学習机の前で伸びをした。
ファンヒーターの暖かい風が、冬真っ盛りの12月の空気を暖めている。時計をみれば、もう日付も変わっていた。
期末試験まで、あと10日。いや、正しくは9日になった訳だ。
大嫌いな試験ではあるが、この試験が終われば、あとはクリスマスとお正月が待っている。
楽有れば苦ありというのだから、逆に苦があった後は楽しくなって欲しいものだが、あたしはクリスマスやお正月を「楽しみ」だと思った事はなかった。
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「よし!おしまいっと」
あたしは言って、学習机の前で伸びをした。
ファンヒーターの暖かい風が、冬真っ盛りの12月の空気を暖めている。時計をみれば、もう日付も変わっていた。
期末試験まで、あと10日。いや、正しくは9日になった訳だ。
大嫌いな試験ではあるが、この試験が終われば、あとはクリスマスとお正月が待っている。
楽有れば苦ありというのだから、逆に苦があった後は楽しくなって欲しいものだが、あたしはクリスマスやお正月を「楽しみ」だと思った事はなかった。
パパとママが研究と称してアフリカ奥地へ出かけて3年。お料理だけはお姉ちゃんが腕を振るうものの、姉妹だけで迎えるクリスマスやお正月が楽しみな訳がない。小学生の頃のように、クリスマスプレゼントを貰える訳でもなく、それどころか末っ子の奈々にプレゼントやお年玉をせびられる始末で、心待ちにするようなイベントではなくなっていた。
更には世の中にいう、「恋人と過ごすクリスマス」なんていうのも、あたしには無縁だった。
級友には昨年のクリスマス、学生の分際で男とホテルで過ごしたのが居て、そのロスト・バージンの経過報告には多くの女生徒がうらやみ、地団駄を踏んだものだが、あたしはうらやましくもなんともなかった。
「彼氏が居ないもんだから、妬いてるんでしょ」
とも言われたが、事実無根の言いがかりだ。あたしは彼氏が居ないのではなく、作る気がなかったのだ。言い寄る男が居なかったのは、絶対に偶然でしかない。
でも、今年は違う。
何しろ、部屋の廊下を挟んで向かい側に、高梨秀作――修ちゃんがいる。
物心ついてから、ずっと大好きだった修ちゃん。幼心からずっと温めていた想い人。その修ちゃんと、今年はクリスマスを過ごせるのだ。
もっとも、ふたりっきりという訳にはいかない。
あたしの家、夏川家は、知ってのとおり、三人姉妹。あたしが真ん中で、小百合お姉ちゃんと、それに妹の奈々。どうせこのふたり、何かにつけて当て擦って、ジャマをするに決まっているのだ。いや、ジャマをするならまだいい。あんな事はもう二度とごめんこうむりたい。
学校でも、あたし達の仲はすっかり周知になった。
転校生としてあたしのクラスメイトになった修ちゃんとは、毎日肩を並べて登校し、机を並べて過ごしている。
修ちゃんが我が家に同居するようになったはじめの頃、あたしはどうしていいか判らずに、かなり修ちゃんを邪険にしていた。幼い頃、一度離ればなれになったとき、気まずいさよならをした事をずっと引きずっていたからだ。そのお話は長くなるので、ここでは触れない。
でも、そんなわだかまりが溶けてみれば、あたしにとって修ちゃんが傍らに居る事はすごく幸せな当たり前の事になっていた。
目敏い悪童達から黒板に相合い傘を書かれたり、「高梨果林」なんて呼ばれたり、けっこうからかわれたが、ああいう手合いはこっちが気にしてないとつまらないらしい。修ちゃんはちょっと恥ずかしそうだったが、あたしは「ええ、そのとおりだけど、それがなにか?」っていう顔をしていたら、そのうち何もされなくなった。
ぼんやりとそんな「ここ数ヶ月」を振り返っていたあたしは、机の引き出しを開けた。 引き出しの中には、うすいピンクのケースが入っている。
一見、ファンデーションケースの様だけれど、中身は違う。開くと入っているのは薬のシートだ。
3列に7つづつの合計21錠。この薬は、トリキュラー21という。
一番上の列は、すでに全部空いている。ここは左から6錠分、赤褐色の薬と、1錠の白い薬が入っていた。
2列目は左二つが空いていて、ここにも白い錠剤があった。その白い錠剤は、あと2錠残っている。そして、淡黄褐色の薬が3錠並んでいる。
3列目は淡黄褐色の薬7錠で占められているから、3種類の薬は、6錠、5錠、10錠の合計21錠だ。必ず毎日、1錠づつ飲まなくてはいけない、ちょっと面倒な薬。21日間、飲んで、7日休み、また毎日飲むのだ。
あたしは、白い錠剤の透明のプラスチックを押す。下のアルミを破って、薬がケースに落ちる音がする。右側を開き、その薬を掌に落とした。
薬を握ったまま、カーディガンに袖を通し、部屋を出た。
階段を降りて、台所へ行き、コップに水を汲むと、掌の薬を飲み込む。
それから、また階段をあがって行った。
更には世の中にいう、「恋人と過ごすクリスマス」なんていうのも、あたしには無縁だった。
級友には昨年のクリスマス、学生の分際で男とホテルで過ごしたのが居て、そのロスト・バージンの経過報告には多くの女生徒がうらやみ、地団駄を踏んだものだが、あたしはうらやましくもなんともなかった。
「彼氏が居ないもんだから、妬いてるんでしょ」
とも言われたが、事実無根の言いがかりだ。あたしは彼氏が居ないのではなく、作る気がなかったのだ。言い寄る男が居なかったのは、絶対に偶然でしかない。
でも、今年は違う。
何しろ、部屋の廊下を挟んで向かい側に、高梨秀作――修ちゃんがいる。
物心ついてから、ずっと大好きだった修ちゃん。幼心からずっと温めていた想い人。その修ちゃんと、今年はクリスマスを過ごせるのだ。
もっとも、ふたりっきりという訳にはいかない。
あたしの家、夏川家は、知ってのとおり、三人姉妹。あたしが真ん中で、小百合お姉ちゃんと、それに妹の奈々。どうせこのふたり、何かにつけて当て擦って、ジャマをするに決まっているのだ。いや、ジャマをするならまだいい。あんな事はもう二度とごめんこうむりたい。
学校でも、あたし達の仲はすっかり周知になった。
転校生としてあたしのクラスメイトになった修ちゃんとは、毎日肩を並べて登校し、机を並べて過ごしている。
修ちゃんが我が家に同居するようになったはじめの頃、あたしはどうしていいか判らずに、かなり修ちゃんを邪険にしていた。幼い頃、一度離ればなれになったとき、気まずいさよならをした事をずっと引きずっていたからだ。そのお話は長くなるので、ここでは触れない。
でも、そんなわだかまりが溶けてみれば、あたしにとって修ちゃんが傍らに居る事はすごく幸せな当たり前の事になっていた。
目敏い悪童達から黒板に相合い傘を書かれたり、「高梨果林」なんて呼ばれたり、けっこうからかわれたが、ああいう手合いはこっちが気にしてないとつまらないらしい。修ちゃんはちょっと恥ずかしそうだったが、あたしは「ええ、そのとおりだけど、それがなにか?」っていう顔をしていたら、そのうち何もされなくなった。
ぼんやりとそんな「ここ数ヶ月」を振り返っていたあたしは、机の引き出しを開けた。 引き出しの中には、うすいピンクのケースが入っている。
一見、ファンデーションケースの様だけれど、中身は違う。開くと入っているのは薬のシートだ。
3列に7つづつの合計21錠。この薬は、トリキュラー21という。
一番上の列は、すでに全部空いている。ここは左から6錠分、赤褐色の薬と、1錠の白い薬が入っていた。
2列目は左二つが空いていて、ここにも白い錠剤があった。その白い錠剤は、あと2錠残っている。そして、淡黄褐色の薬が3錠並んでいる。
3列目は淡黄褐色の薬7錠で占められているから、3種類の薬は、6錠、5錠、10錠の合計21錠だ。必ず毎日、1錠づつ飲まなくてはいけない、ちょっと面倒な薬。21日間、飲んで、7日休み、また毎日飲むのだ。
あたしは、白い錠剤の透明のプラスチックを押す。下のアルミを破って、薬がケースに落ちる音がする。右側を開き、その薬を掌に落とした。
薬を握ったまま、カーディガンに袖を通し、部屋を出た。
階段を降りて、台所へ行き、コップに水を汲むと、掌の薬を飲み込む。
それから、また階段をあがって行った。