さくらのぶらじゃぁ初体験 11
管理
「……ね……ねぇ……知世ちゃん……」
しばらくの沈黙の後、伏せていた顔を上げたさくらは、静かに切り出した。問いかけられて僅かに小首を傾げる知世に、ブラジャーの一枚を両手で前にかざすと、
「……これ、試しに着けてみない?……」
「は?」
言われた事が判らず、知世が問い返す。
「だから、試しに着けてみよう? それで、具合を見て、それから学校に着けていけるかどうか、考えようよ?……」
さくらの言葉に、知世は驚いた表情を浮かべた。だが、暫く考えて、やがて、もっともな事だと思った。
封を開けていないから当然だが、知世はまだブラジャーそのものを一度も身に着けていない。一度、着けてしまうと、顔を合わせるすべての人に「ブラジャーを着けた」事が判ってしまうのではないか? という根拠の無い不安があったからだ。
だが、園美は「初めては、こういうのが良いのよ」と言って選んでくれたのだから、もしかすると、「初めて用」というのは、着けている事が判らないように、何か工夫されているのかもしれない。
「……ね……ねぇ……知世ちゃん……」
しばらくの沈黙の後、伏せていた顔を上げたさくらは、静かに切り出した。問いかけられて僅かに小首を傾げる知世に、ブラジャーの一枚を両手で前にかざすと、
「……これ、試しに着けてみない?……」
「は?」
言われた事が判らず、知世が問い返す。
「だから、試しに着けてみよう? それで、具合を見て、それから学校に着けていけるかどうか、考えようよ?……」
さくらの言葉に、知世は驚いた表情を浮かべた。だが、暫く考えて、やがて、もっともな事だと思った。
封を開けていないから当然だが、知世はまだブラジャーそのものを一度も身に着けていない。一度、着けてしまうと、顔を合わせるすべての人に「ブラジャーを着けた」事が判ってしまうのではないか? という根拠の無い不安があったからだ。
だが、園美は「初めては、こういうのが良いのよ」と言って選んでくれたのだから、もしかすると、「初めて用」というのは、着けている事が判らないように、何か工夫されているのかもしれない。
「そう……ですね。それでは、あちらで着けてきますので、少し待っていて……」
そう言って、さくらが持っている白い布地に手を伸ばす知世。だが、さくらの言葉がそれを遮った。
「え? どうしてここじゃダメなの?」
「え?」
手を伸ばしかけた知世は凍りつき、さくらはその顔を不思議そうに見つめる。
「でも………あの……これを着けるには……その……裸にならないと……いけませんから……」
「知世ちゃん、わたしがお着替えするときは、いつも手伝ってくれるよね? 作ってくれたお洋服、裸で着るのも、あったけど?……」
さくらの指摘に、知世は声を詰まらせた。
知世の最大の趣味は、得意の裁縫で可愛い衣装をつくり、それをさくらに着せて、ビデオで撮影すること。何しろ趣味だけに、さくらが可愛く、美しく、時に凛々しく見えるよう、デザインについては凝りに凝るが、その他の要素は二の次。まして、着心地や動き易さという、さくら自身にとって大事な事ならともかく、着替えのし易さについては、考えた事すらない。
当然の帰結として、着るのに裸にならないといけなかったり、補助が必要な衣装が生み出され、さくらはその度、逃げ出したくなる気持ちを堪えて、知世の前で裸になり、補助を受けて着替えてきた。
なのに、立場が逆になった途端、目の前で裸になるのを避けようとしたのが、さくらには不思議な行動に映ったのだ。
ど、どうしましょう………
知世は凍りついたまま、思案した。
もし、このままさくらの前で脱ぐ事を断固拒否したらどうなるだろう? 当然だが、さくらも知世の前で裸になることを拒むようになるのではないだろうか? そうなれば、イメージ的に素晴らしい衣装のデザインができても、ひとりで着替えができないものはダメという事になる。さくらの愛らしい身体のラインを活かす為に、裸で着るものも拒否されるかもしれない。
それはダメだ。絶対にダメだ。
さくらに着せる衣装には、デザインがなにより優先されなければいけない。可愛らしさが、愛しさが、完全に引き出されるものでなくてはならない。それは、譲ることのできない一線だ。
それでも、さくらの目の前で服を脱ぎ、ブラジャーを着けるところを見られるのは、なんとしても避けたかった。
よく考えれば、体育などの時の着替えと大差はないのだが、初めて着けるものの存在が恥ずかしさを何十倍にも増幅している。
一本の藁のような希望を胸に、知世はひとつの答えを口にした。
「……そ……そうですね……でも、さくらちゃんはお客様ですから、お客様の前で裸になるのは……失礼なの………」
「そんなの全然気にしなくていいよ。わたしと知世ちゃんはお友達なんだから」
さすがは、「ふんわり」のさくらである。知世が言葉のとおり、遠慮をしていると取ったらしい。裏の意図を察してほしいというのは、土台、無理な注文だったのだろう。
「そう……です……か……」
最後の望みを断たれ、知世は小さくため息をついた。
ゆっくりと立ち上がり、さくらを見下ろす。ぺったりとクッションに腰をおろしているさくらは、両手を少し開いた膝の間で揃えてついて、期待に目を輝かせて知世を見上げている。
その様子は、何か愛玩動物を思わせ、思わず抱きしめたくなるほど可愛い。
知世はひとつ、唾を飲み込んだ。
学校での体育をはじめ、さくらの視線のあるところで着替えた事は、決して皆無ではない。一緒に入浴したことだってある。いまさら、目の前で服を脱ぐくらい、どうという事はないはずなのだが、胸のドキドキは収まる気配がなかった。
そう言って、さくらが持っている白い布地に手を伸ばす知世。だが、さくらの言葉がそれを遮った。
「え? どうしてここじゃダメなの?」
「え?」
手を伸ばしかけた知世は凍りつき、さくらはその顔を不思議そうに見つめる。
「でも………あの……これを着けるには……その……裸にならないと……いけませんから……」
「知世ちゃん、わたしがお着替えするときは、いつも手伝ってくれるよね? 作ってくれたお洋服、裸で着るのも、あったけど?……」
さくらの指摘に、知世は声を詰まらせた。
知世の最大の趣味は、得意の裁縫で可愛い衣装をつくり、それをさくらに着せて、ビデオで撮影すること。何しろ趣味だけに、さくらが可愛く、美しく、時に凛々しく見えるよう、デザインについては凝りに凝るが、その他の要素は二の次。まして、着心地や動き易さという、さくら自身にとって大事な事ならともかく、着替えのし易さについては、考えた事すらない。
当然の帰結として、着るのに裸にならないといけなかったり、補助が必要な衣装が生み出され、さくらはその度、逃げ出したくなる気持ちを堪えて、知世の前で裸になり、補助を受けて着替えてきた。
なのに、立場が逆になった途端、目の前で裸になるのを避けようとしたのが、さくらには不思議な行動に映ったのだ。
ど、どうしましょう………
知世は凍りついたまま、思案した。
もし、このままさくらの前で脱ぐ事を断固拒否したらどうなるだろう? 当然だが、さくらも知世の前で裸になることを拒むようになるのではないだろうか? そうなれば、イメージ的に素晴らしい衣装のデザインができても、ひとりで着替えができないものはダメという事になる。さくらの愛らしい身体のラインを活かす為に、裸で着るものも拒否されるかもしれない。
それはダメだ。絶対にダメだ。
さくらに着せる衣装には、デザインがなにより優先されなければいけない。可愛らしさが、愛しさが、完全に引き出されるものでなくてはならない。それは、譲ることのできない一線だ。
それでも、さくらの目の前で服を脱ぎ、ブラジャーを着けるところを見られるのは、なんとしても避けたかった。
よく考えれば、体育などの時の着替えと大差はないのだが、初めて着けるものの存在が恥ずかしさを何十倍にも増幅している。
一本の藁のような希望を胸に、知世はひとつの答えを口にした。
「……そ……そうですね……でも、さくらちゃんはお客様ですから、お客様の前で裸になるのは……失礼なの………」
「そんなの全然気にしなくていいよ。わたしと知世ちゃんはお友達なんだから」
さすがは、「ふんわり」のさくらである。知世が言葉のとおり、遠慮をしていると取ったらしい。裏の意図を察してほしいというのは、土台、無理な注文だったのだろう。
「そう……です……か……」
最後の望みを断たれ、知世は小さくため息をついた。
ゆっくりと立ち上がり、さくらを見下ろす。ぺったりとクッションに腰をおろしているさくらは、両手を少し開いた膝の間で揃えてついて、期待に目を輝かせて知世を見上げている。
その様子は、何か愛玩動物を思わせ、思わず抱きしめたくなるほど可愛い。
知世はひとつ、唾を飲み込んだ。
学校での体育をはじめ、さくらの視線のあるところで着替えた事は、決して皆無ではない。一緒に入浴したことだってある。いまさら、目の前で服を脱ぐくらい、どうという事はないはずなのだが、胸のドキドキは収まる気配がなかった。